2010年6月8日

考えるヒント 小林秀雄 20冊目

小林秀雄氏の本といえば、大学受験でよく出る文章又は難解というのが第一に思い浮かぶ。そのため、今日の今まで読む気が起こらず、手に取ることが全くなかった。きっかけは、小林秀雄氏と岡潔氏の「人間の建設」を手にしたとき。この本については、以前ブログに書評を書いた。

http://ameblo.jp/hiotsuka117/entry-10542607978.html

この本は非常に面白く、数学のプロと批評家のプロの目から感性(情緒)がすごく大切なのだということをいろいろな事例をあげて語っていた。

せっかくなので、考えるヒントにチャレンジしてみよう!という気になり手にとって見た。確かに、難解な文章であるので、なかなか進まなかったが、ところどころなるほど!とうなるところもあった。例えば、歴史については、

近代の美術の歴史を読んていると、人為的な技巧や理論が行き詰まる毎に、自然に還るという考えが、優秀な画家に生じたことが分かる。
歴史を客観的にみるというような事は、実際には、誰の経験のうちにも存じない空言である。

そして福沢諭吉の箇所では、

西洋の学者は、すでに体をなした文明のうちにあって、他国の有様を憶測推量することしか出来ないが、我が学者は、そのような曖昧なことではなく、異常な過渡期に生きているお陰で、自己がなした旧文明の経験によって学びとった新文明を照らす事ができる。

それぞれが考えさせられる言葉であり、著者が題名に付けた考えるヒントにもなる。

さまざまな発した言葉の中でも一番興味を引いたのは、小林氏の本業である人に対する批評についてであった。

批評文としてよく書かれているものは、皆他人への賛辞であって、他人への悪口で文をなしたものではない事に、はっきりと気付く。そこから素直に発言してみると、批評とは人をほめる特殊の技術だ、と言えそうだ。

そして、小林氏は、人をけなすというのは、批評家の持つ一技術ですらなく、批評精神に全く反する態度であると断言する。そういえば、辛口に人物批評をする伝記作家の小島直記氏は、人の伝記をうまく書くコツの一つははその人がすごく好きかどうかであるといっている。

私自身、「人をほめること」は、その人に対して愛情をもつこと。そしてこちらの心がある程度澄んでいないと出来ないことだと思う。なんといっても、人間は悪いところの方が、良いところより目立つわけだから。

そ のためには、如何に自分の心の中の余計な考え方をそぎ落として、シンプルに物事を考えるか?ということが最も大切ではないか。この3年間はヨガを実践して いるが、あまり人間の悪いところに目が行かなくなり、心が落ち着いてきている。それは、ヨガにより余計な考え方がそぎ落とされているためだと思う。

余計な考え方をそぎ落とすことについては、仏教の考え方が非常に面白いので、ブログにていずれ紹介していきたい。

考えるヒント (文春文庫)/小林 秀雄

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