【R#68】呼吸(4)〜重力と呼吸

今まで呼吸に関して3回、本コラムで触れた。

呼吸のプロセスで吐ききったあと、脳幹の呼吸中枢から情報が指令が脊髄へ伝えられる。そこで吸気に必要な筋肉が収縮することで、肋骨が重力に抗して拡大していく(肋骨を広げる)こと(【RolfingコラムVol.62】参照)、その際に横隔膜が重要な役割を果たすことを説明した(【RolfingコラムVol.63】参照)。そして、姿勢においては、ExtensorsとFlexorsが大事でそのバランスが崩れると、呼吸にも影響することを述べた(【RolfingコラムVol.65】参照)。

Phase IIのトレーニングの際に、重力との関係についてどのように見るのか?を学んだ。
調えていくための指標として、身体にどのような重さがどこにかかっているのか?それはgとg’(gは、gravityの重力)という二つの指標を使う。g、g’とは

  • g:重さが身体全体に対して、前面か後面か?
  • g’:股関節から見て重さが上半身に対して、前面か後面か?

である(【RolfingコラムVol.36】参照)。
walking body ver 2
呼吸との関係においてgとg’はどのように見ればいいのか?Phase IIIのトレーニングでは、呼吸とg、g’には2つのパターンについて取り上げた。

スクリーンショット 2015-02-27 19.21.43

左が吸気型、右側が呼気型だ。
吸気型はg’が股関節からみて前方(Anterior)に傾いている。そのため肩を含めた肩帯(Shoulder girdle)を後方(Posterior)にすることでバランスを取っている。ちなみに骨盤は前傾(Anterior)。この場合には、背骨はまっすぐ伸展。このような状態だと吸気がしやすく、呼気がしにくい場合が多い。背骨が伸びているので、菱形筋(Rhomboids)や背骨に近い肩甲骨(scapula)関連の筋肉が緊張している。

呼気型はg’が股関節からみて後方(Posterior)に傾いている。そのため肩を含めた肩帯(Shoulder girdle)を後方(Anterior)にすることでバランスを取っている。ちなみに骨盤は後傾(Posterior)。このような状態だと吸気がしにくく、呼気がしやすい場合が多い。背骨が屈曲しているので、身体の前側の筋肉、大胸筋(Pectoralis Major)、小胸筋(Pectoralis Minor)や前鋸筋(Serratus Anterior)が緊張している。

ここで注意すべきことは、必ずしも吸気型(呼気型)が吸気(呼気)優位とは限らないこと。あくまでも例外がある可能性がある。ただ、この考えは呼吸に対しての一つのモデルで、仮説を立てるのに非常に役立つ。

余談になるが、一つ紹介したい言葉がある。
私の尊敬する今は亡き小室直樹氏の「論理の方法」という本がある。そのはしがきに、モデルについて以下のように書いてある。

「論理を自由自在に使いこなすためにはどうしたらよいか。その秘訣はモデルを自分自身で作ってみることです。モデルは論理の結晶だからだ。
(略)
モデルとは本質的なものだけ強調して抜き出し、あとは棄て去る作業です。」

そう考えると、本コラムで紹介しているTonic Function、ポリヴァーガル理論や解剖学もモデルの一つだ。あくまでもロルフィングにおいて大切になるのは実際に手で触れて感じることの重要性。

本コラムでは、呼吸について4回にわたって紹介していったが、ロルフィングにおいて呼吸に注目することで姿勢がどう影響してくるのか?わかっていただけたと思う。

ロルフィングの動作で見るのは、呼吸と歩行。今後、何回かに分けて歩行について考えていきたい。