2015年7月2日

【P#13】医薬品の開発(1)〜仕組み

世界一周する前の2014年6月6日。製薬業界について話す機会があり、小室吉隆氏の主催するKnowledge Commonsで行われた(【製薬コラムVol.2】参照)。

製薬企業で過去3年間で希少疾患(対象患者が50,000名未満の、当局が認定した疾患への医薬)の当局への申請から発売までの過程をチームとして経験した(【製薬コラムVol.1】にも書いた)ので、そのことについて質疑応答を含め2時間近く話した。発表したスライド及び詳細な内容については、主催者が「オーファンドラッグができるまで~製薬業界のブルーオーシャン戦略、その後」に分かりやすくまとめていただいているのでここでは触れない。

過去に4度、Knowledge Commonsで業界について話したが、世界一周が落ち着いたら、時間をかけて自分のペースで少しずつこの業界についてブログにて書きたいと思っていた。代替医療についてはロルフィングを通じて書いていきたいと考えているが、医療においては、対処療法の現状及び理解も重要だ。関連業界を含め11年近くいたので、対処療法の意義を含め、製薬コラムという形で時々本コラムにて更新していく予定だ。

これから述べる薬に関しては、市販薬として薬局で発売されている一般用医薬品ではなく、医師の処方箋が必要な処方せん医薬品を中心に取り上げていきたい。なぜならば、一般医薬品と処方せん医薬品(医療用医薬品)の売り上げ構成比をみるとわかるように(下記のスライド参照)、製薬会社にとって処方せん医薬品の方がビジネス的に大きなメリットがあるからだ。そのため、製薬会社も処方せん医薬品に力を入れる。

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今回は処方せん医薬品(以下薬)の開発について取り上げたい。

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製薬業界では、製薬の開発本部が医師と共同作業で、薬を治験(=薬事法では、人で行う臨床試験のことを治験という)と呼ばれる臨床試験を医療機関で行う。臨床試験の結果をまとめ審査当局(厚生労働省(MHLW)が審査を委託しているPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が担当)へ提出する。上記のスライドに示しているように国に提出する書類はトラック1台分にも及ぶ。

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審査の結果、承認を得て、薬の値段である薬価が国によって定められた手順で決まると(つまり薬の値段は国によって決まる)、めでたく発売となる。薬の承認までのプロセスは開発本部が担う。発売後は、製薬会社のマーケティング本部及び営業本部が担う。

臨床試験は3段階に分かれており、健常人で安全性を調査するPhase 1、実際の患者に投与して投与量をきめるPhase 2、実際に既存の治療法を比較して薬の効果と安全性を比較するPhase 3だ。

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そして、実際にどれだけの期間がかかるというと、下記のスライドのようになる。

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各段階は薬事法に定められた方法によって行う必要があり、医療機関の各施設は、医薬品の実施に関する基準(Good Clinical Practice, GCP)に満たす必要がある。

実際に、治験を行う際にはPMDAへの事前相談、治験届の提出、それ以外に治験実施計画書(Protocol)、GCP及び規制条件によって実施されているかどうかの記録、CRFと呼ばれる報告、これからを監視する製薬会社のCRA(治験モニタリング担当者、モニターともいう)など様々な書類の提出が必要だ。

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薬の開発は、役割分担が明確になっており、私が製薬会社に在籍していた頃

  1. 薬事本部、当局対応:Regulatory manager(薬事部)
  2. 臨床試験をマネジメント:Trial Manager(CRAをマネジメントする)
  3. 非臨床データを解析する:Pre clinical manager
  4. 薬の品質などの管理:CMC manager
  5. 申請文書作成、Statistician、Medical writer
  6. 安全性調査部、Safety and Benefit Risk Management(安全性の情報をどのように集め当局に報告するのか?を考える部署)
  7. サイエンス・医師からの視点、メディカルアフェアーズ本部、Medical Director(開発本部に属していない、独立した立場)
  8. 開発品目のビジネスの面からの評価、プロダクトマネージャー、Product Manager, Marketing(開発本部に属していない、独立した立場)

の業務があった。なぜ、8の開発品目のビジネス評価が必要か?というと開発の成功確率がだんだん低くなっているということ(下記の二番目のスライド)。

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また、開発の費用も年々上昇していることが要因としてあげられている。

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私の製薬業界での主な任務は開発品目のビジネス面からの評価とメディカルアフェアーズの科学的な見地からの評価が仕事だった。年々開発費用が高まっていること、そして特に日本の開発費用が外国に比べて高いこと(下記のデータ参照)から、グローバルの製薬企業が日本への投資を控えるというケースを見ることもできた。

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今回は、簡単に製薬会社の開発の仕組みについて取り上げた。次回は、製薬会社の開発を考える際の問題点について取り上げたいと思う。