2015年7月12日

【P#18】医薬品の開発(6)〜特許と後発医薬品

医薬品と特許について述べたい。というのも、医薬品の富の源泉は特許にあり、開発を進めて行く際には製薬会社はこの特許の考えの下、進めて行くからだ。

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知的財産権(intellectual property rights)とは、幅広い知的創造活動の成果に対する一定期間与えられる権利の保護である。この中に、発明を保護する特許権(Patent)がある。特許法で発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいう」。発明とみなされるためには以下のような一定の要件を満たす必要がある。

1)「産業上利用することが出来る発明」であること

2)その発明が「新規性」をもつこと

3)その発明が「進歩性」をもつこと

4)明細書の記載が規定どおりであること

5)先に出願されていないこと(米国は、「先発明主義」で、先に発明されていないことが要件となる)

6)公共の秩序に反しないこと

特許権の目的は、発明者に一定期間の独占権を与え、模倣防止と研究開発の推奨などにより、産業の発展を図るためである。製薬企業が特許権を持つことによって特許を与えられた医薬品を独占的に製造販売できる。なお、特許を侵害した場合には、侵害行為の差し止め、損害賠償請求などの訴訟が可能となる。

医薬品の特許は、以下の4つに対して与えられる。

1)物質特許:新しい化合物。

2)用途特許:特定の物質に対する新しい効能・効果。

3)製法特許:物質の新しい製造方法。

4)製剤特許:薬の安定化等薬剤上の新しい工夫。

たとえ、物質特許が切れたとしても、他の特許の期間が残っている可能性もある。そういった場合には、後発医薬品の発売が遅れることになる。

参考に、既存の医療用医薬品(先発医薬品)と有効成分、投与経路、含量、用法・用量が同一、また効能・効果も同等な医薬品のことを、後発医薬品(Generic drug又はgenerics)という。通常、新薬の再審査期間及び特許期間の満了後に後発医薬品は市場に出るが、後発医薬品のメーカーは、特許権期間中でも後発医薬品の申請のための試験を行うことが出来る。

医薬品の特許の特徴は、物質特許や他の特許であれ1つであること。このため、家電や自動車のような複数の特許からなる産業に比べライセンス料は莫大になる。特許権は、特許出願から20年である。しかし、医薬品の研究開発には約10年~15年の長い歳月が必要とされる。このため、特例として条件を満たせば、5年の延長が認められている。

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米国では、独占権は二つあり1つは米国特許商標局(USPTO)が与える「特許」、そしてもう一つはFDAが与える「排他権」である。二つは独立した組織だが、互いに補う形で運用されている。

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米国特許商標局の与える特許は、申請書が提出されてから20年間有効となっている。一方で、FDAの「排他権」は、特許とは異なり臨床試験が成功して市販が承認されたときに与えられる。通常新規分子は5年間、オーファンドラッグで7年間、既承認の薬剤に変更があった場合には3年間である。しかし、FDAの与える独占権の期間が過ぎても、その医薬品と関係のある特許に効力があるとFDAは後発医薬品を承認できない。

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さらに、1984年「医薬品の価格競争および特許期間の回復の関する法律」が出来た。これはオーリン・ハッチ上院議員とヘンリー・ワックスマン下院議員が提案したためハッチ・ワックスマン法とも呼ばれる。この法律は開発及びFDAでの審査にかかった期間を埋め合わせるため医療用医薬品の独占権の期間を延長し、後発医薬品を製造している会社の活動も促進する意図があった。なぜならば、後発医薬品の承認プロセスは大幅に簡素化されたからである。具体的に述べれば、後発医薬品の承認を行う際に臨床試験が不要となり、同じ有効成分を含み生体内で同様に働けばという「生物学的同等性」さえ示せばよいとされた。この結果、米国での後発品の売上は20%から現在の50%まで上がった。

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後発医薬品は先発医薬品に比べ、開発費がほとんどかからないため、同じ成分の医薬品をより安価に市場に出すことが出来る。このため、薬価は安く定められている。また、最近の診療報酬の改定で後発品の方が、処方せん料の点数を少なくすることで医療費の高騰を下げるためにも、後発品の普及に力を入れている。なお、2005年診療報酬改定では、後発品使用促進のための環境整備の一環として、処方せんの様式の変更が行われた(「後発品でもよいと判断したら署名又は記名・押印」)。

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米国では、後発医薬品の使用促進のために発行されるオレンジブック(Orange Book)が知られている(これは、FDAのホームページでも見ることが出来る)これは、先発医薬品と後発医薬品の生物学的同等性の判定をFDAが行い(生物学的同等性試験)を測定した結果を掲載している。日本版オレンジブックはあるが、医療用医薬品品質情報集のことを指し、同じのように品質の再評価の経過や結果を掲載する。ただし、この本は通知ごとに発行されるために一覧性がないという欠点がある。このため、医薬工業協議会がこれらを補って更に広範囲の情報を掲載したオレンジブック総合版がネットで公開されている。

以上で簡単ではあるが、特許について取り上げた。次に、医薬品の審査や薬価(薬の値段)について具体的に触れたい。