2015年7月16日

【P#21】医薬品の開発(9)〜保険の仕組み(1)

開発の仕組みについて取り上げていたが、開発を知る上で、医療の仕組みを知ることが重要だと考えるので、もう少し深堀りして紹介する。

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日本の社会保障制度の歴史は、1945年~54年の戦後の緊急援護と基盤整備の時代に制定された、生活保護、結核対策から始まり、1955年~オイルショックの時代に国民皆保険・皆年金が達成。1989年における国民年金基金の制定、そして現在の少子高齢社会に対応した制度構築期にいたっている。なお日本における社会保障の給付状況は、

1)年金等の所得保障

2)医療保険・公費負担医療等の医療保障

3)社会福祉サービス

の主に3部門に分けることができる。

社会保障制度は、各国によって制度が違う。医療保障制度の方式は大きく2つに分けることできる。社会保険方式(日本、米国、ドイツ、フランス)と保険サービス方式(イギリス)である。社会保険は保険料積立方式が基本になっているのに対して、保険サービス方式は全額を租税で負担する仕組みになっている。米国を除く、日本、イギリス、ドイツ、フランスは原則として全国民を対象としているのに対して、米国は公的保険の範囲が狭く、民間保険が対応している部分が大きい(米国については、マネージドケア(managed care)との関連で【製薬コラムVol.10】にて触れた)。

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健康保険、国民健康保険、共済組合などのもともと日本の健康保険制度はドイツと英国の中間型として形成されてきた。国民皆保険という平等主義は英国型であるが、ドイツ型の職域保険(社会保険)も並存している。しかし、ドイツの職域保険が一生補償するの対して、日本の社会保険は退職してしまえば、国民保険、老人保険へと移行するという半官半民的な中途半端さがある。

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前述したように日本では国民皆保険が1961年から実施されているため、国民は被用者保険(健康保険等)または地域保険(国民健康保険)のどちらかに加入することになっている。

被用者保険制度とは、事業所の従業員が被保険者となり、保険者にあらかじめ保険料を払うことにより、病気、けが等の医療を受けた際に保険者がその費用を保険医療機関等に支払う制度である。事業所の形態により、政府管掌健康保険(政管健保)(従業員数5人以上で健康保険組合に属さない。主に中小企業)、組合管掌健康保険(組合健保)(300人以上の被保険者を使用する事務所が単独または2以上で共同して組合を設立するもの)、船員保険(外国航路、遠洋漁業等の大型船舶に乗り込む船長、海員等が対象)、共済組合(国家公務員、地方公務員、私立学校教職員等がそれぞれ共済組合を形成している)などが知られている。

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被用者保険制度が発展する中、それに属さない自営業者、従業員5人未満の中小企業または農山漁村の住民に対しては、国民健康保険への加入を義務付けることによって国民皆保険制度が制定されるようになった。なお、他の職域保険に加入資格を有する者は国民健康保険の対象外となっている。なお健康保険の退職者(他の健康保険に該当しない者)は、原則として、国民健康保険に加入することになる。が、任意継続被保険者、特例退職被保険者、退職被保険者などの選択肢もある。

医療費抑制政策の一環として患者への負担がある。この目的としては、患者に医療のコスト意識をもたせることで、過剰な医療を排除することにある。そこで、1984年に患者1割負担の導入が行われた。それが2割となり、平成14年の健康保険法等改正法では、医療保険制度における患者の自己負担の割合は、3割に統一された。一方で3歳未満の乳幼児は2割負担、70歳以上の高齢者は1割負担(一定以上所得者は最大で3割まで)というように、世代ごとに違った負担額になっている。

日本の医療制度は以下のような特徴にまとめることが出来る。

  1. 全ての国民が保険制度に加入していること
  2. 患者は自己負担が少なく医療機関の受診に制限がないこと
  3. 医師は自由に開業できること
  4. 医療報酬が医療機関や医師によって差がなく一律であること

そして出来高払い(Fee for Service)であることなどである。このことから、諸外国に比べ医療機関へのアクセスが良いシステムになった。アクセスがいいということは、一方で、受診者が過剰になるということを意味する。また、すべての病院が同じ質の医療サービスを提供するということが前提が一つの問題点としてある。実際は質がバラバラにもかかわらず、厚生労働省が全院内情報を把握しているにもかかわらず情報を公開していない(公開すると質の違いが明確にされこの前提が崩れる)。

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診療報酬支払いは診療行為ごとに点数を決め、1件あたりの費用を出来高払いで計算する個別出来高払い方式をとっている。このため、1)薬漬けになる可能性が大きい、2)医療費の高騰、3)サービスの量は増えるが、効率のいい医療に結びつかない(質の向上につながるかという問題)、4)利益の低い医療サービスには目が向かないなどの問題が発生する。また、請求、審査、支払い実務の複雑化や保険者の財政負担を予測することが非常に難しくなる。

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一方で、出来高払い方式とは違う、DRG(Diagnosis Related Groups)/PPS(Prospective Payment System)という定額払い及び診療別包括払い方式がある。出来高払い方式では、サービスの量によって収入が決まり、医師の診療における自由裁量権がほぼ保障されている。包括払い方式は疾病の種類、重症度によって決まり、医療は標準化した診療を行う必要が出てくる。包括払い方式は定額払いのため、医療のサービスの量は少ないが、医療費の出費を抑えることが可能となる。ただし、欠点として包括払いの報酬が原価以下となれば医療の質が低下してしまう傾向がある。日本では一部DPCという形(次のコラムで触れる予定)で導入している。

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日本と米国のもっとも大きな違いは、日本には国民保険や社会保険のような公的保険が米国には、65歳以上を対象にしたメディケア(Medicare)と低所得層を対象としたメディケイド(Medicaid)の2つしかないことである。アメリカの他の健康保険は、生命保険などと同じように数多くの保険会社によって保険商品として販売されている。日本の医師は、基本的に保険がきくかどうかよく理解しているが、アメリカではそうとは限らない。逆に知らないことが多く医師から、保険がきくかどうか聞かれることが多い。

引き続き保険制度について取り上げたい。