2017年5月9日

【B#54】人工知能と未来(2)〜人の強みはチームワーク、意思、少ない情報から学ぶ

人工知能については、以前本コラムで紹介した(「人工知能と未来(1)〜人間と人工知能のそれぞれの強みをどう理解するか?」参照)。

2017年5月のゴールデンウィーク(GW)期間中、久々に色々な本を手にとってみたが、

今回、

「人ができて、人工知能にできないことって何か?」

という観点から3冊紹介したい。

1冊目は、ピーター・ティールの「ゼロ・トゥ・ワン〜君はゼロから何を生み出せるか

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オンライン決済のPayPalを共同で創業し、4年後にeBayに売却。その後、投資家としてシリコンバレーで活躍中だ。本書はスタンフォード大学で行われた起業についての授業から生まれたのだが、

「起業していく上で、どのように考えていけばいいのか?」

を中心に本は進む。

例えば

「スタートアップではチームで働くのが大原則で、かつ実際に仕事をやり遂げるには、それを少数にとどめる必要がある」

「ほとんどの人はグローバリゼーションが世界の未来を左右すると思っているけど、実はテクノロジーの方がはるかに重要だ」

「小さな違いを追いかけるよりも大胆に賭けたほうがいい」

「出来の悪い計画でも、ないよりいい」

等。

本書で興味深かったのは、テクノロジー=コンピュータと人との関係。

「人間と機械は、それぞれ根本的に異なる強みを持っている。人には意思がある〜僕たちは計画を立て、複雑な状況で判断を下す。一方で、大量のデータを読み解くのはどちらかというと苦手。コンピュータはちょうどその反対で、効率的にデータを処理できる反面、人間にとっては至極簡単な判断でさえ下せない」

その結果、人間はコンピュータと手を組めば、大きな成果を上げることができるということになる。

例えていうならば、人間は家畜や照明をツールと捉えているように、コンピュータをライバルではなく、ツールとして捉えれば、万事うまくいくというのだ。実際に、本書ではビッグデータというのはガラクタが多い分、人間的な分析の目を持つことで初めて必要な情報を引き出されるということを紹介。

どんなに人工知能が発達したとしても、その影響は限定的になるであろう。それよりもゼロから1を作る出すような能力は人間独自のもの。その能力を発揮することの大切さを説く。

2冊目は「知の逆転

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ボストン在住のサイエンスライター・吉成真由美さんが複数の知の巨人にインタビューした内容をまとめたもので、シリーズで3作出版されている。

本書の中で、人工知能の開拓者のマービン・ミンスキーのインタビューを紹介したい。

2011年の東日本大地震の後、福島原子力発電所にロボットを送り込んで作業させることすらできなかった(→リモコンでロボットを操作すること)という事例を挙げて、

「問題は、研究者が、ロボットに人間の真似をさせることに血道を上げていること、つまりたんに「それらしく見える」だけの表面的な真似をさせることに夢中になっている、というところにあります」

ということを指摘した上で、

「チェスの場合、単に可能な手を検索し尽くすというだけで、人間の対戦者を負かすことができるのです。人間にとって難しいことは、コンピュータにとって朝飯前で、人間にとって易しいことは、研究の対象として無視されてきたわけで、全く変な話です」

と述べている。

意外なことに

「まずコンピュータに、人間の子供にできるレベルのことができるようにする。そこから成長させて行けばいい」

を述べている。

興味深かったのは、1980年代にロボットの知能を上げる研究をしていた人たちが、言語の代わりに統計へ切り替え、正確な表現よりも、統計的な予測を主体とした人工知能の研究が発展していったこと。

株式市場予測、宿泊、スーパーの在庫の予測などのような、言語よりも数字に特化したビジネスよりのものが中心で、言語の理解となると、自動翻訳機を含め、まだ発展途上だという。

3冊目は「人類の未来〜AI、経済、民主主義」。

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同じく、吉成真由美さんによる著書だが、ノーム・チョムスキーとシンギュラリティという説を唱えているレイ・カーツワイルの2人を取り上げている。

「人工知能が人間の知能を超えるというアイデアは、今のところ完全なる夢です。どのようにしてそれを実現するかというコンセプトはまだないですし、その夢を支えるような証拠もない。世間で騒がれている人工知能の業績というのは、膨大なデータとコンピュータの高速な計算力に頼ったもので、それらは、何を求めるべきかを知っている人間がデザインしたプログラムによってガイドされているものです」(ノーム・チョムスキー)

「現在人工知能が直面する問題の一つは、彼らは人間と同じくらいの知能を持つことが可能だけれども、それは十分な情報を提供されている場合に限る、という点です

(略)

言い換えれば、人工知能の課題の一つは「少ない情報から多くを学ぶ」ということです。人間は、経験を積むと、わずかの入力で全体を把握することができます。上司や配偶者が一回何をいったかだけでそれを学習するので、何回もそれについて言われる必要がなくなる。何億回も言われる必要がないのです」(レイ・カーツワイル)

3冊を振り返ってみると、

結局、人間ができることといえば、

1)チームワークで一つの物事に当たって、新しいことを生み出すこと。

2)そのために、少ない情報から学んだ上で、試行錯誤を繰り返し、成功をつかむこと

3)何を求めるのか?を知った上でコンピュータとコラボすること

なのかもしれない。

これからも人工知能についてはチェックしていきたい。

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