2017年10月9日

【B#66】資本主義と経済格差(1)〜富裕層の台頭と所得格差の拡大はなぜ起きているのか?

世界一周する前に米国に本社がある製薬会社に勤めていたが、CEOの給料を内部の社員から聞く機会があった。そのときに、社員との間の給料の格差に唖然とした経験がある。

1)経済格差が生まれたのはなぜか?〜政府の対応(→今回紹介する1冊目)

2)テクノロジーの観点から格差が生まれたのはなぜか?〜スマホとアプリの時代(→今回紹介する2冊目)

個人事業主として活動しているとはいえ、日本経済が発展が妨げられることで、大きな影響を受けるので、知りたいと思っている。

今回は2冊の英語の本を中心に紹介していきたい。

1冊目が「Robert B. Reich: Saving Capitalism – For the Many, Not the Few 」(日本語訳:ロバート・B・ライシュ著「最後の資本主義」)。

第二次世界大戦前後の米国の繁栄から所得格差がどのようにして生まれてきたのか?

クリントン政権の元労働長官のロバート・B・ライシュが政権の中枢に在籍した経験から、彼なりの視点で米国政府の自由市場における役割について、以下のように述べている。

Government doesn’t ‘intrude’ on the ‘free market’. It creates the market.(政府は、自由市場を妨害するのではなく、市場を作るのだ)

The size of government is not important, but the rules for how the free market functions have far greater impact on and economy and a society.(政府の大きさが問題ではなく、自由市場を機能させるためにては、どのようなルールを作るのか?が経済と社会に大きな影響を及ぼす)

そして、自由市場を保つために

Property – what can be owned(所有:何を所有できるのか?)

Monopoly – what degree of market power is permissible(独占:どこまでの市場の独占が許されるのか?)

Contract – what can be bought and sold and on what terms(契約:どのような条件下で売買できるのか?)

Bankruptcy – what happens when purchaser can’t pay up(破産:購買者が破産したときに何が起こるのか?)

Enforcement – how to make sure no one cheats on any of these rules(執行:ルールを守らない人をどのように監視するか?)

の5つの視点で説明していく。

興味深いのは、大資本や富裕層が政府に働きかけて、上記の5つを富裕層有利になるように市場ルールが変化するように法案化。その具体的なことが法案名とCEOや労働者の給料の変遷を示しつつ、

1950-1960年代に米国が世界最大の中間層を作り上げ、当時の労働者の給料が2倍(米国経済の成長の2倍)になったが、対照的に30年後、経済規模が2倍になったが、典型的な労働者の給料が上がらず。同年代のCEOの給料が労働者と比べ20倍だったのが、30年後、200倍以上になった背景がわかりやすく説明されている。

現状では富裕層有利になっており、米国の中間層が減少。中間層が消滅してしまえば、資本主義が行き詰まってしまう。現状の不満がトランプ政権を生んだということを考えると、社会制度が後追いとなり、政府が現場に追いついていないことが伝わっている。果たして解決策が生まれるのか?具体的な解決策はそれほど多く示されていなかったが、政府がどのように対処していたのか?その現状を知る上で良書だった。

2冊目に紹介したいのは、’Thomas L. Friedman – Thank you for Being late – An Optimist Guide to Thriving in the Age of Accelerations“(日本語未訳)

「資本主義が急速に発展して、貧富の差が広がっていっている理由は何か?」

テクノロジーの観点から本書では語られている。

転機となったのが、2007年。アップル社のiphoneの登場した年に始まる。米国の通信大手AT&Tにより、2007年1月から2014年12月にかけて無線の通信量が10万倍にその能力を増強していくことが余儀なくされる。

結果、2006年に大学から始まったFacebook、2006年によるGoogleによるYouTube買収、2007年のGoogleによるAndroidの立ち上げ、2007年のAmazonのKindle、2008年の民泊サイトのAirbnbの設立や2009年のUber等のプラットフォームが飛躍的に発展。

そして、ムーアの法則によるスマートフォン(スマホ)が加速的に高速化。

スマホにより多数の人へデジタル情報のアクセスが可能となり、デジタル情報の保管場所としてのクラウドやソフトを含め維持コストが大幅に低下。アナログ技術がデジタルに置き換わりが加速的に進む。例えば、タクシーはUber、ホテルはairbnb、テレビはYouTube、天気予報はスマホのアプリ、ショッピングや書店はAmazonなど。そして、Facebook、Google、Apple、Amazon等がコストの低下によってデータが集積しやすくなり、より立場を強化。政府が対策を講じる前に、これらの企業の情報の寡占と市場の独占化が加速的に進む。結果的に持てる者と持たざる者との間に格差が生じる。

技術だけ急激に発展してしまい、人間の五感=身体感覚がそれについて行っていないのではないかと著者はいっていたが、私も同感だ。

それを裏付けるかののように、

ゴリラの研究の第一人者の山極寿一先生は、

「人間の脳は第五感を超えてそのような広大な領域に対処できるようにはできていない。相変わらず身体のつながりをもとに信頼関係を構築しようと欲している。(略)現代の社会にも集団規模に応じた古いコミュニケーションの方法が残っている。情報機器に用いられた視覚や聴覚以外の感性、すなわち嗅覚、味覚、触覚を用いてそのコミュニケーションの利用を考えるべきである」

と「人類の社会性の進化(下)〜共感社会と家族の過去・現在・未来」に書いている。

身体感覚と技術という観点からIT業界を考えると、その限界が見えて興味深い。

上記のご紹介した2冊は、資本主義がどのように発展し今後どういった方向へと向かうのに理解を深める2冊だ。所得問題以外にも、トランプ政権やヨーロッパの難民問題、教育問題を含め気づきが多いので、世の中の大枠の流れを知りたい方に勧めたい。