2017年11月28日

【B#78】「コーチング」のベースとなった本〜「インナーゲーム」

私がCTIジャパンで「コーチング」の応用コースを終えたのが2009年12月。神経言語プログラミング(Neurolinguistic Programming、NLP)も同時に勉強していたので、「人の話の聞き方」および「コミュニケーション」について大枠を理解するのに役立った。それが、現在のロルフィング・セッションやタロットによる個人セッションに生かされている。

「コーチング」で面白いのは、価値観=BEINGにフォーカスすると、行為=DOINGが変化していくということだ。

そうはいうものの、なぜこういった単純な考え方で、成果を出させることが可能になるのか?

実は、コーチングを考える原点となる本がある。

Timothy Gallwey(以下ガルウェイ)による’The Inner Game of Tennis – The Classic Guide to the Mental Side of Peak Performance‘(邦訳:ティモシー・ガルウェイ著「インナーゲーム」)

私は小学校から高校までテニスをしていた。

テニスというのはテニスコート、ラケット、テニスボールがあればできるスポーツで、米国に滞在期間中(小学一年から中学二年)は、公立学校のテニスコートは無料で使用することができた。そのため、練習する機会に恵まれた。

そしてコーチについて、色々と学ぶことができた。

その頃のコーチといえば、

「コーチが手本を示し、どういった動きの欠点があるのか?動きを分析。頭で理解させてから実行させる」

というのが主流だったと思う。

しかし、その方法論が間違っていることをガルウェイは指摘するところから「インナーゲーム」が始まる。

本では、ガルウェイがリラックスした雰囲気の中、アドバイスを減らし、観察するようになったら、スイングの間違いが生徒自身で改善することに気づく。そして、言葉で伝えることが、自己修正能力を低下させていくことがわかった。

そして、初心の生徒に対して、通常、テニスラケットの持ち方、打つ方法や足の使い方を教えるのではなく、自分で打つ方法を見本で示すことにした。

ポイントは、打つのを考えて見るのではなく、イメージを掴むということ。イメージを生徒のなかに何回かイメージさせて、身体に真似させる。10回打つのをコーチが示した後に、同じことをイメージさせた後に、ラケットを手渡す。そうしたら、一発目でうまく打てるようになったという。

このような経験から、テニスのプロ選手は、勝負事に勝ちたいと思う「アウター・ゲーム」と、自分の心の中で戦っている「インナー・ゲーム」の二つの戦いに挑んでいるということがわかった。

ガルウェイが注目したのが、セルフ1とセルフ2という2つの自分。

セルフ1とは、I(自分)=Teller(指示を出す人):指示や反省している自分自身=「エゴ」=「自我」のマインド

セルフ2とは、Myself(自分自身)=Doer(実行する人):実際にプレイしている自分=「身体」

興味深いのは、セルフ1は、セルフ2の上に立ち指示を出して、欠点を指摘し、評価しようとする点。結果として、自己否定感や恐れ、不信感に繋がりやすく、いいパフォーマンスができなくなってしまう。

大切なのは、

セルフ1が黙り、「無心」になった状態になった時に、最高のプレイができること

ということだ。

従来の指導法だと、選手の中で起きていることを言語化。雑音=指示・反省が作り出され、結果的に「無心」が妨げられる。パフォーマンスが大幅に低下していく。

ガルウェイは、

ポジティブ・シンキング=「全てを前向きに考えるとうまくいく」

についても、セルフ1の観点から説明している。セルフ1をより良く見せるための行動なので、改善しないというのだ。

一方で、

セルフ2は、身体という、脳、記憶装置(意識・無意識)、神経系を動員。物事を素早く習得し、正しく実行する能力を持つ。セルフ2を全面的に信頼することさえできれば、うまくいく。

 

ただ、セルフ1が常に主導権を握ろうとして、批判的に評価。セルフ2を見下し、萎縮させてしまう。

では、セルフ1に対してどのように対応したらいいのか?

Awareness(知覚する)ことをキーワードに、説明。自分の行動を善悪で判断するのでなく、知覚すること。

これを

「Non Judgmental」=「判断しない」

な知覚と述べている。

Holding The Sky

その結果として、自己評価を含めた判断がなくなり、セルフ2が「自主的な選択」を行うことができるようになる。それを「信頼すること」でパフォーマンスが上がっていく。

考えてみれば、ロルフィングの教育も観察に主眼を置いている。

トレーニング法と科挙」で触れたが、Ida RolfがRolfingを教え始めた当初、Auditing(観察者(知覚する)の段階)とPractitioner(施術者(施術経験)の段階)に分けて教えていた。

前者は、身体を観察し、施術することを一切しない。施術者が繰り返し観察し続け、

「Rolfingについて観察する上で何が大事なのか?」

を理屈ではなく、身体に染み込ませるまで続くのだ。

まさに、これはセルフ1ではなく、セルフ2の強化。

観察を継続して行うことによって自然と無意識にロルフィングに必要な観察の技術が磨かれていったと思う。

この考えをビジネスに応用したのが、今日本で流行っているコーチングだ。

セルフ1を知覚し、セルフ2に全面に任せ、信頼するか。コーチングでは、それを価値観(BEING)と行為(DOING)とうまく使い分けている。

このような奥深い人間心理があったというのを改めて知り、コーチングの理解も深まったと思う。ぜひ、コーチやセラピストを生業としている方には勧めたい一冊だ。