2019年6月5日

【P#39】からだの学校(5)〜肺について:バリアの役割と選択、腸内細菌、皮膚症状等

2019年6月2日(日)、「からだの学校【東洋医学】@Kei.K Aroma Studio(神奈川)」(開催は、Kei.K Aroma Studio)の講座(講座は全6日間)の3回目を受講した。講師は札幌在住の風の音の治療院・安部雅道先生(鍼灸師、以下安部さん)。

安部さんの講座を受けていると、東洋医学は身体全体から見ていないと理解できないことがよくわかる。木・火・土・金・水と臓器別に学ぶが、それぞれが相応にコミュニケーションを取ることで健康を保つことを学び、つながりを理解して初めて全体像がわかるようになるので。

約1年半前にNHKスペシャル「人体」が放映された(「NHKスペシャル「人体」取材班:「人体・神秘の巨大ネットワーク:臓器たちは語り合う」」参照)。

本番組のコンセプトは、

「体の中には巨大な情報ネットワークがある」

というもの。

本書では、体内のネットワークのなかで、臓器から臓器へ、細胞から細胞へと情報を伝えている物質を「メッセージ物質」と名付け、色々と実例を挙げている点だ。

古い例でいえば、ホルモン。

ホルモンは、臓器から臓器へ、身体の遠く離れた場所へ指令を出す手段として働いていて、身体の特定の場所だけが出す物質として知られている。例えば、成長ホルモンは脳の下垂体、性ホルモンは性線、甲状腺、副腎からもホルモンがでる。

しかし、今や様々な臓器(心臓、腎臓、胃、腸)や筋肉、脂肪細胞、免疫細胞からも「メッセージ物質」が出ており、臓器同士でコミュニケーションをとることで、身体のバランスを整えていくことがわかってきた。

例えば、

1)脂肪組織と胃は脳と連携して食欲を調整する:脂肪組織からレプチンが出ており、脳に働きかけて食欲を抑制する。胃からは、空腹を感じるとグレリンを放出。これも脳に作用し、食欲を促進する。

2)腎臓は、肝臓と肺と連携して血圧を調整する:腎臓は、血圧を上げるため、レニンを放出するが、肝臓からアンジオテンシノーゲン、肺からACEとレニンが反応することで初めて、血圧が上がることができる。

3)腸内細菌が腸内の免疫を調整する:腸には、100兆個以上の腸内細菌が生息しているが、消化吸収を助けるのみならず、様々な物質を出している。そして、腸には全身の免疫細胞の7割が集まる「免疫の臓器」でもあるが、腸内細菌が出すメッセージ物質によって、腸内の免疫を抑える方向で働いている。

等の事例が取り上げられている。

東洋医学も、相克や相生関係で五臓五腑をとらえるので

全ての細胞がメッセージを出し合うことで、私たちの生命は維持されている

という考えが西洋医学から出ているのは非常に興味深いと思う。

さて、3回目の前半は、五行論の土(「脾について:消化器の働きを管理し、食事による影響を受ける」参照)。後半は金について取り上げた。

今回は、金について書きたい。

金の五臓は肺、五腑は大腸。

西洋医学では、肺は呼吸で取り込んだ酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)の役割を果たしている。

東洋医学はどうか?

肺の働きを挙げると、

1)呼吸器全ての管理(鼻、喉、気管、肺、皮膚)

2)呼吸によって天の清氣(酸素)を取り入れ、体内の濁氣(二酸化炭素)を放出

3)呼吸と食事によって作られた氣を巡らせる

4)人に気を使うなどの「気働き」も肺が管理(気を使うということは、自分の氣を相手に渡すと東洋では考える)

等。

このように、西洋医学と役割が似ているのもあるが、皮膚を管理することや、気を使うといった『気分』を管理する内臓なので、範囲が広い。そして、心理的な部分も扱い、デリケートな働きを担うと考えていい。

東洋医学では、からだの中のいらないものを外へ発散する場合、肺がコントロールすると考えており、

目に見えないもの=肺

目に見えるもの=大腸

のような役割分担を果たす。

肺の機能が低下すると、発散が下手になる。これはストレスの発散も含まれているので、肺の機能の低下はストレス発散がうまくできなくなる。

一方で、肺には下に降ろす(東洋医学でいうところの「粛降」)役割がある。

例えば、

・肺の吸気で、酸素(清気)を体内に取り入れて、下に降ろす(腎臓へ貯蔵)

・毛穴を閉じて、熱を体の中に留める(水分は腎と膀胱へ)

肺の下に降ろす役割を果たすので、肺の働きが弱まると、地に足がつかなくなる。

肺は外の刺激から体を守ってくれるバリアー的な役割を果たし、

「自然なものを受け入れ、不自然なものは受け入れない」

を決める。

「肺の働きが弱まると、肌荒れや肌に症状が出てくる」

安部さんは、皮膚症状がおきた場合には、必ずしも肺の働きの低下だけではなく。大腸や肝臓の働きの低下の可能性が大きく、これらが肺に影響して起きることも話していた。

肺は呼吸器の入り口の嗅覚にも影響するので、肺を助ける良い匂い(アロマ)が呼吸を助け、発散し、緊張を緩めてくれるという。

対策として、スパイス、ハーブ、コーヒー等を挙げていた。

そして、心理学的には、肺の働きが落ちてくると、憂いや悲しみが出てくるので、悲観的になる。憂と悲は氣を消耗させ、結果的に肺の働きを更に低下させていく。

さて、肺とパートナーを組む大腸。そこには多くの常在菌が住んでいる。

マーティン・ブレイザー先生の「失われてゆく、我々の内なる細菌」には、常在菌について書いているが、人の身体には、合計で100兆個の常在菌(1,000〜5,000種類存在すると推測されている)が存在し、人間の全細胞数(37兆個)より多いと言われている。

西洋医学では、常在菌の多様性が健康の鍵であり、腸のバリアーとして働いていると考えられているが、現代の人は、偏食、加工食品の摂取、抗生物質を含めた薬剤を使うことが多くなっているので、腸内細菌の多様性が失われている場合が多い。

多様性が失うことで、若年者は、潰瘍性大腸炎、うつ、発達障害、喘息、高齢者は、パーキンソン、アルツハイマーなどの疾患の要因の一つとして報告されるようになった。

皮膚にも、汗腺からでる水と皮脂からでる脂肪酸を餌に常在菌が皮膚バリアーを作る。バリアーを失うと、外部の刺激に対して皮膚は弱まり、アレルギー症状が起きやすくなっていく。

このことを考えると、肺(皮膚)と大腸(腸)がペアを組んで、バリアの役割を果たしていると考える東洋医学の先見性には驚くばかりだ。

次回の安部さんの講座は、7月7日の予定だ。楽しみにしていたい。