2019年7月11日

【P#49】からだの学校(7)〜「氣」とは何か?〜五行論をどう結びつけるのか?と臓器間のコミュニケーション

2019年7月7日(日)、「からだの学校【東洋医学】@Kei.K Aroma Studio(神奈川)」(開催は、Kei.K Aroma Studio)の講座(講座は全6日間)の4回目を受講した。。講師は札幌在住の風の音の治療院・安部雅道先生(鍼灸師、以下安部さん)。

毎回2コマに分かれて行い、前半が五行論の水(「腎・膀胱について〜エネルギーを蓄える、ストレスに対応、血液の調整等」参照)、後半は「氣」の概論についてのセミナーが行われた。

東洋医学は「氣」(エネルギー)という目に見えないものを扱う。

氣だと実感湧きにくいので、イメージしやすいものを東洋の人たちは考えた。それを陰陽説と五行説という形にした(「東洋医学の基本的な考え方に触れる:陰陽説、五行説、自分で基準を作る」参照)。

氣についての説明も、西洋医学との比較から見てみたい。

人間は、外から食事を通じてエネルギーを取り入れる必要がある。

西洋医学では、5大栄養素(炭水化物・脂質・蛋白質・ビタミン・ミネラル)と空気(酸素、肺の働き)、水の流れ(血液の流れ)、電気の力(細胞のミトコンドリアでのエネルギー産生、神経系の働き、心臓のポンプとしての機能)を使ってエネルギーを取り入れ、自分の栄養にする仕組みがあると考える。

その一連のプロセスを代謝(Metabolism)と呼ぶ。それぞれを細かく分析し、一つ一つ明らかにしていくのが、生化学・分子生物学と生理学だ。

代謝には、「同化」「異化」の2つがある。

「異化」(Catabolism、カタボリック)とは「身体の中で使えるエネルギーを作ること」

「同化」(Anabolism、アナボリック)とは「エネルギーを使って身体を作ること」

「異化」とは、消化・吸収されるプロセスと考えることができる。

食事が口から入り、食道、胃、十二指腸、小腸に送り込まれる。胃酸や膵臓から出る消化ホルモンの力を借りつつ、時間をかけて、食事からの栄養素(炭水化物、脂質、蛋白質)を分解、小腸から吸収できるような形へと整えていく。

炭水化物(主にご飯)→消化→単糖(グルコース、ブドウ糖)

蛋白質(お肉など)→消化→アミノ酸

脂肪(バター、油など)→消化→脂肪酸、グリセロール

そして、

小腸で最終的に吸収。門脈を経由して、肝臓に一度集められる。

肝臓で、身体内で利用できる形に加工され、肺、心臓を経由し血液を介して、全身の細胞に栄養として送られる。

細胞までくると、

酸素と酵素の力を使って、

食事→消化→解糖系→クエン酸経路→電子伝達系→ATP(アデノシン3リン酸)

と進み、人間が使いやすいエネルギー(ATP)として細胞に蓄えられる。

「同化」は「体を作ること」=細胞を作ること。

細胞は、以下の4つの材料からできている

1)ヌクレオチド(DNA、RNAの材料)

2)脂質(細胞膜などの材料)

3)蛋白質(酵素などの材料)

4)糖(エネルギー貯蔵のために使用)

これらの材料を作り際に、エネルギー源としてATPが使われる。

面白いのは、神経系や心臓で使われる電気だ。

心臓ではポンプとして、血液を循環させるため、内臓は脳からの神経系の指令を、筋肉が動くために脳からの指令として、それぞれ電気の力を使って行っている。又、人間の栄養となるATPも電気の力関わる。細胞の中にあるミトコンドリアが関わると言われているが、これも電気の流れ(水素イオンの濃度勾配と酵素の力)によってATPが作られる。又、老化、動脈硬化や生活習慣病に活性酸素が関わると言われているが、これも電子不足(電気の過剰)によって引き起こされる。

いずれも、西洋医学では、目に見える「物質」や「電流」をベースに物事を考えていく。

では、東洋医学は、どうか。

生命を維持する基本物質として、氣・血・津液(しんえき、津駅とは体の水分)があると考える。

陽の性質としての氣、陰の性質として血、津液と考える。基本物質を作るのが、脾だ。

氣については、陰陽説と五行説の考えがあるが、どちらかというと、各要素に分ける考え方。統合的に氣をみていくためには、以下の4つの視点から見る必要がある。

原氣、宗氣、営氣、衛氣の4つだ。

それぞれの意味は、

1)原氣(元氣、げんき):生命活動の原動力となる氣、「先天の精」から作られ丹田に収められている(→西洋では異化)

2)宗氣(そうき):呼吸と脈動の原動力(肺と心を綜合する氣、呼吸によって作られる氣)(→西洋では呼吸、心臓や神経系の働き)

3)営氣(えいき、栄氣):体を栄養し、助ける氣(脾胃によって作られる「後天の精」の「陰性の氣」)(→西洋では同化・異化)

4)衛氣(えき):体の表面を巡り体を守る防衛の氣(「後天の精」の「陽性の氣」)、皮膚を暖め、体温を維持。毛穴の開閉。外邪の侵入を防ぐ(→西洋では免疫と恒常性の維持)

親から受け継いだ氣(原氣)、呼吸と心臓の原動力となる氣、食事によって取り入れた氣、身体を守る氣の4つ。西洋医学でいう、遺伝子的背景と子宮内の環境、呼吸・心臓の循環、食事の内容、身体の免疫と置き換えたら整理ができると思う。何れにせよ、広範囲に渡って東洋医学では氣を捉えているのが、興味深い。

面白いのは、営氣。

営氣は、1日に体を 50周(経絡を巡る)すると考えられており(1周で約30分)、12本の経絡を通っていく。鍼灸師さんは、針を使って治療を行うが、外から針をさすことで、氣の流れを刺激、流れるようになる。同じ身体の流れでも、衛氣は表面に流れ、営氣は体の中(経絡)を流れるところに違いがある。

氣の生理功能(氣の働き)には

・推動(すいどう):成長発育、生理活動(循環・呼吸・消化・排泄)(原氣、宗氣、営氣、衛氣)

・温煦(おんく):体を暖め、体温を維持する(原氣、衛氣)

・防御:外邪の侵入を防御する(衛氣)

・固摂(こせつ):血を外に漏らさない。汗・尿・唾液・胃液・腸液・精液などの分泌や排泄の調節(衛氣)

・氣化:血を精に、精を血に、氣を津液や氣に変化させる(宗氣、営氣、衛氣)→西洋医学でいう代謝や排泄

の5つがある。

それぞれに問題があると、症状に現れる。例えば、温煦に問題があると、体が温まらない。防御に問題があると、疾病にかかりやすくなる、見えない刺激に弱くなる。そして、氣が血を固摂しなければ出血しやすい、津液を固摂しなければ、多汗、多尿、尿失禁、鼻水等が多くなる等。

五行との関係で「氣」を見ると、今までの五行論の一つ一つが有機的に繋がっていることもわかる。

氣を取り入れる際、

鼻(肺)から天の氣(呼吸)

口(脾)から地の氣(食事)

目(肝)や耳(腎)から人の氣(見る・聞く)

と、顔の部分と五行の臓器を照らし合わせて考える。

鼻と口は、西洋医学の代謝(同化・異化)の考えに近い。

興味深いのは「人の氣」。

「人の氣」によっても氣が変化することや、目や耳から取り入れること、顔のパーツから内臓の状態も見ることができるのは本当に東洋医学独特で、考え方が面白い上、便利だと思う。

そして、氣を貯蔵する腎。

親から受けついだ「先天の精」と食事と呼吸から取り入れた「後天の精」を腎が貯蔵する(「腎・膀胱について〜エネルギーを蓄える、ストレスに対応、血液の調整等」参照)

西洋医学では、エネルギーの貯蔵は各細胞が、内臓でも肝臓のみならず脂肪細胞、筋肉等、細かく見ていくが、東洋では腎に注目するのが面白い。

最終的に氣を巡らせるのが、肺・肝。体の中を営氣が、体の外を衛氣がそれぞれ流れていくことになる。

氣は自然なリズムに合わせて活動していくが、

昼間・春・夏→活動するため、外側(筋肉)に氣が集まる

夜間・秋・冬→体を回復させるため、内側(内臓)に氣が集まる

日内変動が起きるのだが、自然のリズムに乗れないと、朝起きられない、夜眠れないといったことが起こる。

氣に関係する症状としては、

氣が足りない=氣虚

氣の巡りが悪い=氣滞

がある。

氣虚は、氣の消耗や食事の乱れや氣の生成不足によって起こる。悪化していくこと、体が冷えたり(陽虚)、老化が進む、風邪がひきやすくなる、腹の不調などが起きてくる。

氣滞は、氣の巡りが悪くなること。悪化すると、イライラや腹が張る、喉が詰まるなどの症状が起き、体に熱がこもるようになる。原因としては、悩み、ストレス、体の緊張など。

によってわかってくる。

氣は西洋には出てこない考え方の一つだが、いくつかポイントを押さえることで、症状から類推することができるので、西洋と東洋と一緒になって考えていくのも面白いと思った。

後、からだの学校も2日(4回)。楽しいながら臨みたい。

 

参考に、過去に4日間、開催されたセミナーについては、本コラムに書いたので下記をご参照いただければ幸いです。

陰陽五行説:「東洋医学の基本的な考え方に触れる:陰陽説、五行説、自分で基準を作る

五行論

木+火:「心・肝について:感情、生理、睡眠及び西洋医学との関係性

土:「脾について:消化器の働きを管理し、食事による影響を受ける

金:「肺について:バリアの役割と選択、腸内細菌、皮膚症状等

水:「腎・膀胱について〜エネルギーを蓄える、ストレスに対応、血液の調整等