2020年6月4日

【P#35】医薬品の開発(15)〜ジェネリック医薬品とは?(2)〜どのように作られているのか?法律や品質の問題点について

2019年から2020年の初頭から流行り始めたコロナウイルス感染症。

新規ワクチンや特効薬の開発に注目が集まるが、

その医薬品、特にジェネリック医薬品について、

1)ジェネリック医薬品がどこで生産されているのか?

2)どのように流通しているのか?

日本国内であまり注目されていない。

そこで、今回はこの点に関して書きたい。

多くの製薬会社はグローバル企業。

20世紀の後半から21世紀の初頭にかけて、多くのグローバル企業が割安の賃金を求め海外へ生産拠点を移した。結果、海外に依存した流通の仕組み(グローバルサプライチェーンという)を持つようになった。

しかし、国内で非常事態宣言、海外でロックダウン等により、国境が実質的に閉鎖。経済活動が止まってしまう事態になった。

「マスク」が手に入りにくいニュースが新聞やマスコミで騒いでいるが、それ以上に、今後、医薬品のグローバルサプライチェーンにも大きな影響が出る可能性がある。

今回、ジェネリック医薬品が抱えている問題点について書きたい。

ジェネリック医薬品とは?先発医薬品とどう違うのか?値段は?」には、政府の後発医薬品を進めている現状について紹介。

理由として、

1)先発品に比べ薬価=薬の値段が安い

2)先発品を含めた医療用医薬品の市場規模が大きいこと

を挙げた。

本当に「ジェネリック医薬品は大丈夫なのか?」

ニューヨークタイムズやフォーブス誌に寄稿しているジャーナリストのKatherine Ebanの著書’Bottle of Lies: The Inside Story of the Generic Drug Boom‘(邦訳なし)には、ジェネリック医薬品の品質や生産現場を含め綿密な取材に基づいて一冊にまとまっている。

その中で、衝撃を受けたのは、

「ジェネリック医薬品の40%はインドで生産され、(先発、ジェネリック関係なく)医薬品の有効成分の80%はインドや中国で生産されている。なんと、米国の抗生物質の100%は国外で生産されている」

事実だった。

医薬品は、いうまでもなく。製品の安全性と品質が重要。

原料をどのように調達しているのか?

製造の工程一つ一つが、どのように管理されているのか?

薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)で定められている基準に合っているかどうか?

国(厚生労働省・PMDA)の査察官が入り、

医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則(この規則はGMPという=Good Manufacturing Practice)に定められている、

・原料の保管

・品質のチェック

・製造工程途中の中間製品の品質検査による工程管理

・最終製品の品質検査・保管

等の作業が標準化され、マニュアル化されているかどうか、チェックが入る。

これは日米欧で同じような仕組みをとっているので、日米欧で生産されているならば、査察が入るので問題になることはあまりない。

問題になるのは、

海外で生産される場合、品質のチェックが本当に入っているかどうか

だ。

Katherine Ebanの本に沿って、以下説明していきたい。

ジェネリック医薬品の品質や生産現場(特に、中国やインド)で起きていることについて、驚くべき事実を暴露している。

例えば、

1)インドの最大手のジェネリック医薬品メーカーは、データを改竄したをFDA(米国で薬の審査を行う当局、Food and Drug Administration)に提出していること(著者はこれは氷山の一角だという。2013年のFortune社に著者は投稿)

2)FDAの査察官は多忙のため、全世界に割けるリソースを割り当てることができない。そのため、インドや中国への査察は国内に比べ疎かになっている

3)米国の最大の輸出先の中国の原末メーカーに査察が入った際、データが改竄されていたのだが、FDAは中国語を読めず、通訳する人材も不足。そのため、メーカーの通訳に頼るケースが。審査がしっかりと行えない懸念がある

第一三共株式会社がインドのジェネリック医薬品メーカー・ランバクシーを買収したが、

問題なのは、FDAはこのような問題があるにもかかわらず、あまり厳しくすると、世界的な医薬品供給体制が逼迫するので、及び腰であること。

日本の厚生労働省ではなく、FDAが及び腰だというのには本当に驚きだ。

本では、2013年〜2017年の話をカバーしているが、現状が変わっているとは思えない。

私が周囲の人に「ジェネリック医薬品」を薦めたくないのは、このような事実があるためだ。

もちろん、コロナウイルス感染症がきっかけとなり、グローバルサプライチェーンの見直しが行われれば、話は別だが。

医薬品メーカーがスポンサーとなっているマスコミや新聞から正確な情報を入手するのは難しい。

そう考えると、医薬品を含め、自分で情報を取りに行き、自分で判断してくことが大事なのではないか、と思う。

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医薬品については、時々書いています。下記をご参照ください。

ジェネリック医薬品と先発医薬品の違いは?何を知っていればいいのか?(「医薬品の開発(14)〜ジェネリック医薬品とは?先発医薬品とどう違うのか?値段は?」「医薬品の開発(15)〜ジェネリック医薬品とは?(2)〜どのように作られているのか?法律や品質の問題点について」参照)

医薬品の情報を見極めるためには「疫学」の知識が必要〜疫学とは何か?について(「医薬品の開発(13)〜『疫学』とは何か?〜医療情報をどのように判断するか?」参照)

審査書類は何を用意したらいいのか?製薬会社に勤めた過去の経験をベースに(「医薬品の開発(12)〜審査」参照)

米国の保険制度の特徴の一つはマネージドケア、その特徴について(「医薬品の開発(11)〜マネージドケア」参照)

医薬品は保険を財源としている〜保険の歴史、出来高払いと診療別包括払いの違いについて(「医薬品の開発(9)〜保険の仕組み(1)」「医薬品の開発(10)〜保険の仕組み(2)」参照)

処方箋医薬品の薬の値段(薬価)を決めるために、欧米ではエビデンスを重視するようになった(「医薬品の開発(8)〜薬価(2)〜仕組みと保険制度」参照)

処方箋医薬品は、国によって値段が決まっている〜どのような仕組みになっているのか(「医薬品の開発(7)〜薬価(1)」参照)

医薬品は特許で守られているが、どのような仕組みがあるのか(「医薬品の開発(6)〜特許と後発医薬品」参照)

国の審査が優先的に進む医薬品もある〜希少疾患、オーファン医薬品(「医薬品の開発(5)〜オーファン医薬品」参照)

製薬会社の審査は誰が行うのか?当局(国)の存在(「医薬品の開発(4)〜FDAと審査」参照)

医薬品の開発で何が重要になるのか?主要評価項目について(「医薬品の開発(3)〜エンドポイント」参照)

医薬品の審査には、製薬企業のお金が入っている現実(「医薬品の開発(2)〜TLOと事前相談費」参照)

医薬品の基本的な仕組み(「医薬品の開発(1)〜仕組み」参照)

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