【R#234】「腕」「背骨」のバランスは、人間の距離の取り方に影響か?〜身体の平面から立体面への心理的変化〜3回目のセッション「前後」

はじめに

みなさん、こんにちは!
東京・渋谷(恵比寿)でロルフィング・セッションと栄養・タロットカウンセリングを提供している大塚英文です。

前後のバランスを整えるとは?〜身体を平面から立体的に捉える

私は、2015年6月から渋谷・恵比寿・代官山にて、ロルフィング・セッションを提供している。

ロルフィングとは、
1〜2週間に1回、手技を使って、毎回テーマに沿って施術を行う方法の一つ。

身体を整えながら「身体感覚」を磨くことができるので、
身体の不調(肩こり、腰痛)も改善する。

前々回、ロルフィングの1回目では、呼吸を整えること、
前回、2回目では、足裏を整えること、
を中心に、身体感覚を磨くと、それぞれ「心」にどう影響するのか?を紹介した。

3回目に入ると、2次元(上半身、下半身)を更に拡張して、
3次元(前後、空間)に注目してセッションを行う。

それは、身体を3次元に捉え直すところに繋がり、身体に大きな変化をもたらす。

今回は、2次元から3次元への変化が、身体や心にどう影響するのか?
ロルフィングの3回のセッションのどこにアプローチするのか?を中心にまとめたい。

西洋絵画史と人間の世界観〜2次元から3次元へ

2014年9月にロルフィングの基礎トレーニング(Phase II)を受けた時のロルフィングのインストラクターは、イタリア人のGiovanni Felicioni先生だった。

「2次元の見方が3次元に変わった途端に、人間の世界観はどのように変化するのか?」
西洋の絵画史に例えることで、わかりやすかったので、ここで再度紹介したい。

そもそも、
「絵画って、作者が、どのように世界を見ているのか?」
が反映されやすい。

キリスト教の時代に生きた人たちは「イコン」を使って世界を表現。
「イコン」とは、イエス・キリスト、聖人、天使、聖書における重要な出来事や例え話、教会史上の出来事を描いた画像で、主に平面(2次元)で描く。

キリスト教が支配した中世は、人間は罪深い存在。
そのため、人間は三次元ではなく、聖なる人物は二次元で表現するようになった。しかも、偶像崇拝を避けるためだ。

ロルフィングの1、2回目のセッションでは、このような人間の見方を持って、施術を行う。

イタリアでは、中世からルネサンスに移り、経済が発展する時代に突入。
ジョット(Giotto)は、絵画に三次元的な空間表現や人物の自然な感情表現を取り入れるようになる。いよいよ、立体的な人間の見方(3回目のセッション)が美術史で登場する。

4E09-620

ラファエロ(Raphael)は、更にそれを推し進め、アテナイの学堂において数学の考え方を取り入れ、左右、前後の対称性に注目して作品に反映させている。

この作品で、空間の意識がより深まった印象を与える。

800px-Raffael_058

時代を経て、印象派のゴッホやピサロは、空間認識に遠近法の消失点(Vanishing point)を取り入れて、絵画に奥行きを取り入れるのに成功している。

gogh3

消失点とは、実際平行なのに、平行でなく描く際にその線が交わる点のことをいう。

ロルフィングで「歩き」を観察する際には、歩行者の視線の消失点をどこに意識がむかっているのか?具体的なものの例、物体(机、椅子)、窓、建物)や視線の視野が狭まっているか?広まっているか?

実は、消失点の意識(消失点意識とは、方向を定めること)が定まらないと「空間認識」が狭まってしまう。
背景の認識を広げる(後ろの認識をすると)消失点を大きくなり「歩き」や「姿勢」の力みがとれてくる。

これがよく表れているのが、マティスとモネー。これらの作品を見ると空間表現は描く対象の前景(foreground)のみならず、背景(background)にも力点が置かれるようになる。

結果、絵画にバランスがもたらされる。

2次元から3次元へ〜人間関係の距離の取り方に変化

消失点、前景と背景のバランスがうまく使えるようになると、外部環境と身体との距離感が適切にとれるようになる。

例えば、
「他人との距離、空間との距離をどの程度とるのか?」
と考えると分かりやすいかもしれない。

この感覚が弱いと、
「自分の立ち位置がわからない」
「他人の立ち位置がわからない」
ためか、
「非社会的な行動につながる」
可能性も高まる。

Sandra Blakesleeの「脳の中の身体地図」には、下記のことが書かれている。

「両腕を身体の正面にいつぱいに伸ばす。手は指先までピンと伸ばして、平らにすること。そのまま、上下、左右に振ってみる。頭の上から大きく回して脇に下ろす。四本の腕を他つシヴァ神のつもりになって、あなたのテリトリーをもっと大きく広げてみよう。さて今、腕が通過した全空間をイメージしていただきたい。これがあなたの身体を取り巻くパーソナル・スペースだ。神経科学者はこれをペリパーソナル・スペース(Peri-personal Space、Periとは周辺)と呼んでいる。この空間が隅から隅まで脳内でマッピングされている」

このPeri-personal spaceは個人によって違い、それが人と人との距離感の取り方に現れてくる。

個人的なスペースの確保がなぜ大切か?というと、
外部環境に身を置いたときに、脳が空間をどのように移動しているのか?把握しておかないと不測の事態(例、車やバスが向かってくる、人が接近してくる)に対応できなくなる。

対応するために、手を伸ばしたり、引き離したり、近づいたり、身を守ったりする必要がある。このためにPeri-personal spaceが形成される。

実は、3次元にとらえるということは、自分のスペースを確保することである。
これは、身体の中心軸を整える前に、意識することが大事になる。

最終的に、身体を立体的に捉えることで、身体感覚に深みが増し、深層筋のセッション(4〜7回)への準備が整っていく。

前後のバランス〜どこにアプローチするか?

前後のバランスを整えていくために、ロルフィングの3回目のセッションは、
肩・腕、背骨、腿
の3箇所に注目する。

肩も腕も「前後のバランス」の境目である体側面にあり、身体の前後のバランスを整える上で重要な役割を担っている。

例えば、
「歩き」の時に、腕を振るが、これは「歩き」の最中に、前後のバランスが不安定にならないように対処するためだ。
更に、
背骨には、頚椎、胸椎、腰椎、仙骨とカーブ(湾曲)を作っているが、その湾曲が筋膜の緊張によって崩れていることが多いにある。

前後のバランスを整えるということは、カーブを調えることでもある。
このことで、結果的に腰痛の軽減へつなげていく。

まとめ

ロルフィングでは、呼吸、足、前後のバランスを通じて、3次元的に身体が整っていく。

今回は、2次元から3次元の人間的見方が、どう心理的に影響を与えるのか?
について見てきた。

次回は、4回目以降の、中心軸を整えるセッションと、なんでこれが重要なのか?
について取り上げたい。

この内容が少しでもお役に立てれば幸いです。