【R#288】直立二足歩行〜エネルギー効率が良いが、転倒のリスクがある

はじめに

東京・渋谷でロルフィング・セッションと脳科学から栄養・睡眠・マインドの脳活(脳科学活用)講座を提供している大塚英文です。

私は、2015年6月から、ロルフィングのセッションを提供している。「筋膜」へアプローチすることで、身体の姿勢が整えていく。ロルフィングで見る姿勢は「歩く」「立つ」「座る」の3つだ。共通しているのは、人間の特徴である「二足歩行」を見ていることだ。今回は「二足歩行」について情報をシェアしたい。

人間の特徴:直立二足歩行にある!

人間の特徴は「二足歩行」、いや正確には直立した状態で二足歩行する「直立二足歩行」にある。「直立二足歩行」については、他の動物と人間と比較しながら語った、ジェレミー・デシルヴァ著「直立二足歩行の人類史」がわかりやすい。この本はボディワーカーにはお勧めで、今回は、この本を参考にしながら「直立二足歩行」についてシェアしたい。

そもそも、人間はどのように「直立二足歩行」をしているのか?多くの専門家の間では「直立二足歩行」を「制御された転倒」と表現するそうだ。片足を上げると、身体は重力によって前(方)と後(方)に引っ張られる。転んで顔を地面にぶつけるのは避けたい為、足を前に伸ばして、地面に下ろすことで、身体を支える。

この状態だと、歩き始めた時よりも、身体が下に位置するため、身体を再度引き上げる必要がある。そこで、ふくらはぎの筋肉を使って身体を引き上げるのだ。更に片足を前に、転倒を回避していく。

少し専門的になるが、ふくらはぎの筋肉を使って、足を引き上げると、位置エネルギーが蓄積され、重力によって、片足が前方に出る(前方に引っ張られる)ことで、運動エネルギーに変換。実は、重力を使うというのがポイントで、65%のエネルギーを節約することができる。

位置エネルギーから運動エネルギーへの変換は振り子の原理と一緒。逆の振り子で人間は歩くといってもいいのだ。

直立二足歩行の特徴①:エネルギーの消費が低い

興味深いことに、人間は、歩く際に膝と腰を曲げない(対照的にチンパンジーは膝と腰を曲げる!)。人間の腰の両側についている筋肉のおかげで、大腿四頭筋の負担が少ない。片足でバランスを取ることができるのだ。このため、チンパンジーに比べ、エネルギーを消耗することなく、歩くことができる(チンパンジーは歩くと、人間の2倍のエネルギーを使う)。

直立二足歩行の特徴②:安定性に欠く、姿勢も大事

実は、人間が「直立二足歩行」になることで、やや安定性を欠く歩き方になった。というのも、転倒するリスクが常にあるからだ。米国の疾患予防管理センター(CDC)のデータによると、65歳の4人に1人は、転倒。5人に1人は骨折をし、転倒により36,000人が亡くなっている。

高齢者に転倒が多いのは、筋肉の量が落ちてくるというのがあるが、身体に負担のかからない姿勢で二足歩行をしているかも大切になってくる。

では、ロルフィングは「直立二足歩行」とどう関係があるのだろうか?

ロルフィングと二足歩行、座ること:2つの方向性の意識

ロルフィングは「直立二足歩行」を、
「下半身が地面をしっかりと受け止めた(重力とともに着地した状態の)上で、上半身の可動性を増すこと」
と伝えている。

これは、身体には2つの方向性を持つということを意味する。下半身は重力を感じる(下向き)、上半身は、それを土台に背筋が伸び、自由に動くという原則に則っている。この時、最も自然で、身体に負担のかからない歩行ができる。

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椅子に座る際も、2つの方向性を意識することができる。足が地に着き、椅子で坐骨を支え(足と坐骨が下向き)、坐骨をベースに上半身を上に伸ばす意識(上半身が上向き)を持つと、もっとも適した動きになる。

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また、呼吸を行う際に、上下、左右、前後の3種類の動きがあるが、これもまさしく2方向性を示していて、これらの動きを意識できると呼吸が深まる。

2方向性に注目して動きを追うと、肩こり、腰痛等は、上半身と下半身は2方向性ではなく、双方とも下向きの意識になってしまっている為に起きると場合が多い。例えば、座るときに坐骨への意識が低下し、背中が丸まり、上半身の背筋を伸ばす意識がなくなるからだ。

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ロルフィングと筋膜〜転倒のリスクを下げる可能性

以前、ロルフィングでは「筋膜」に注目すると書いた。筋膜は、筋肉、内臓、骨、神経を含めた身体の各部位を配置し、身体のエネルギーを効率よく使えるようにする、いわば「姿勢」にとって大事な臓器だ。

ロルフィングは手技を使って「筋膜」へのアプローチ。「筋膜」が動きやすい場所に行けるよう適度な圧を加えることで、姿勢が整っていく。ポイントは、身体が動きやすい場所のことがわかっており、ロルフィングの施術者は、身体が反応することを待つことだ。

興味深いことに「筋膜」へアプローチすると、身体が2方向性を意識しやすくなり、歩行、座ることも自然と負担がかからない姿勢へ変化。転倒のリスクも減らせるし、肩こり、腰痛などの予防にもつながっていく。

まとめ

今回のブログでは、直立二足歩行について、エネルギー効率的にいいことだが、転倒するリスクや、ロルフィングは、筋膜へアプローチすることで、歩行、座ることを含めた、姿勢を整え、転倒のリスクを下げる効果も期待されることを書いた。

少しでも、この投稿が皆さんに役立つことを願っています。