2015年5月30日

【R#102】セラピスト(3)〜プロセス

吉福伸逸氏のセラピストとしての考えについては、2回にわたって紹介してきた。1回目は、セラピストとしてどのようにして人を見たらいいのか?4つのポイント(関係性の力、存在の力、情緒・情動の力、あたまの力)があることを紹介(【RolfingコラムVol.96】参照)。そこで、存在の力と関係性の力についての考え方について触れた。存在の力とは、その人の全体像から湧き出る雰囲気・気配。存在の力によって雰囲気・気配が違ってくる。その人と接することで安心感が生まれるかどうかも、この力。

iStock_000003828495XSmall

存在の力というのは関係性によって培われる。自然、親、同僚、学校、職場などの関わりによって人間は何者であるか、というアイデンティティーが確立していく。しかし、上記の環境というのは長く続くものでもないので、今までのやり方が通用しない事態となった場合には、アイデンティティーを一度破壊し、新たに作り直すことが求められる。これを吉福氏は「アイデンティティーの破綻」という言葉で現した(【RolfingコラムVol.96】参照)。

iStock_000002722014Small

次にセラピストが現場で経験する3つの要素について取り上げた(【RolfingコラムVol.97】参照)。「吉福伸逸の言葉」によると、それはコンテキスト、プロセスとコンテンツ。コンテキストは、人間観や世界観。人間観や世界観は、それをセラピストが言語化しようがしまいと、意識化していようと無意識のままであろうと、セラピーの場に強く反映されるという意味で説明し、そのコンテキストがセラピストの現場に大きな影響を与えることを述べた。

吉福伸逸1

今回は、コンテキストとプロセスの関係について書きたい。

吉福氏は、セラピーにおいて「クライアントと共にいること」を大切にする。

その姿勢とは、

クライアントご自身で自分のエッジ(限界)を越えていく力を持っていると徹底的に信頼するということ

にある。そのためには、傾聴・共感というのがかえって邪魔する可能性を指摘する。クライアントへのサポートというよりも同情(ある種の決めつけといってもいい)し、傷の舐め合い、迎合へと結びつく場合があるからだそうだ。

iStock_000005470912XSmall

そのためにも本コラムで取り上げたコンテキストが大事。それはある意味、”Hold the space” に近い。

本コラムで取り上げたことがあるが、その意味は

「人が何かを経験する際、その人が安心できるような環境を整えるために、時間やスペース(間)を与えること。

大切なのは安心できる、安定した環境を与えることで、判断しない、批判しない、非難しないこと。いわば、その人が「あるがまま」になれる中立状態。そして、彼らの知性を信じ、自分で答えを導き出すことができるようにすること。」

【RolfingコラムVol.83】参照)。

ミュンヘンでロルフィング・トレーニングを受講した際に、頻繁にこの言葉が出てきた。実際に、Hold the spaceということを怠ると、クライアントとのつながりを失ってしまうためだ( ロルフィング・トレーニングでは、自分を見失うケースについて【RolfingコラムVol.77】で取り上げた)。

iStock_000009746182XSmall

「自分のエッジを越えていくこと」とは、「クライアントが自分のテーマに直面することを手助けすること」

でもある。それは、自分が見たくない嫌ことに向き合うということ。結局は、

クライアント自身が、その嫌だと思っていることを選択しているに過ぎず、それをセラピストが受け入れていること

によって初めて、変容が起きてくるのだ。

iStock_000015648022Small

最終的にクライアントのプロセスを徹底的に信頼し、静かにそばにいることが重要となる。その秘訣となるのが、セラピストが自分自身をごまかさずにしっかりと見ることができること。結局は、人間は「自分の中にないものは見えていない」であり、裏を返していえば、「自分の中にないものは見えないが、全て自分の中にあるので見えるはずだ」ということでもある。

セラピストについては、また機会があったら書いていきたい。