【R#86】Phase III(27)〜ヨガとの関係〜ロルフィングはヨガのどこ部分を取り入れているのか?

本コラムで何度か取り上げたIda Rolfの著書’Rolfing and Physical Reality’にはロルフィングについて興味を引くようなことが書かれており、ロルフィング・トレーニングの期間中、何度か立ち返って読むようにしている。例えば、ロルフィングの手技を開発するにあたって、Ida Rolfはオステオパシーやホメオパシーの影響を受けたと述べている。

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当時はまだこういった代替療法が疑問視していた頃の話だったが、Idaは果敢に自分の治療にも取り入れるようになる。例えば身体の構造が身体がどのように働くのか?を決めるという発想はオステオパシーからの影響が強い。

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最も興味深かったのはヨガからの影響も受けているということ。Idaは、ヨガが西洋ではやる前の1920年頃にYoga(当時はYogとよばれていた)を学んでいたらしい。そして、身体的な観点からYogaを以下のように見ていたそうだ。

the principle aim of yoga asanas is to increase the space at bony interfaces (joints). That is to say, the assumption of yoga is that bodies need to lengthen, and the means by which this length is achieved are positions in which opposing body parts pull or twist each other.
ヨガのアーサナ(ポーズ)の主要な目的は、骨と骨との間のスペースを広げること(このスペースは関節)。すなわち、ヨガというのは、身体が伸びる必要があり、身体の両側が引っ張りあうか、回転するかによって実現する。

これは、ロルフィングの5原則(【RolfingコラムVol.68】参照)の一つ、2つの方向性という考え(【RolfingコラムVol.19】参照)に大きな影響を与えているのではないかと思う。

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面白いのは、Idaはヨガには一長一短があることを知っていたこと。それは以下の言葉から伺える。

Slowly she realized that the asanas did not achieve length and separation of the joints, that in too many cases there was actual contraction of the joint surfaces
徐々に彼女は、ヨガのアーサナが身体を伸ばし、関節を広げるということを実現していないことに気づく。というのも、関節を収縮させるケースの方が多いことがわかったからだ。

私はヨガを日頃から練習しているが、膝の痛みや肩こり・首こりがなかなか消えることがなく過ごしていた時期があった。西洋で発達したボディワークに興味きっかけとなったのは、せっかく身体の柔軟性や安定性を増すことを目的としてヨガのポーズをとっているのに、なぜこうした力みが出てくるのか?という疑問からだった。
私の場合には、ボディワークの一つ、アレキサンダー・テクニックを学び、練習にとり入れることによって、力みが劇的に少なくなることがわかった(【YogaコラムVol.9】参照)。参考に、1年間学ぶ機会のあったアレクサンダー・テクニックとロルフィングは共通点が意外と多いことを【RolfingコラムVol.85】で触れた。

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ボディワークとヨガとの関係については本コラムで書いたことがあるが(【RolfingコラムVol.11】参照)、ロルフィングを通じて学んだことは、身体観察を重視することで、人間は一人一人違うということを知ったこと。身体の骨格や構造が違うということはぞれぞれに対して多様なアプローチの必要だということを意味する。これはヨガについても当てはまるし、ヨガ含めた代替療法の特徴を表していると思う(【RolfingコラムVol.73】参照)。

生徒の中にヨガの先生が何人か参加しているので、時々ヨガについて話す。例えば、ロルフィングでは、首の前後のどちらに緊張があるのか?をセッション7で見るのだが、前後の筋肉の緊張度合いによっては、下向きの犬のポーズ(Downdogのポーズ)で目線(アシュタンガヨガでいうドリスティ)をへそに向けるために首を曲げる動作をすると首こりをさらに悪化させる可能性がある。また下向きの犬のポーズで膝を曲げ、坐骨を天井に向けるように伸ばすと、背骨が伸びるので腰痛が軽減する可能性がある。
ヨガの発祥の地はインドだ。インド人の身体の使い方や文化に影響を受けている。一方で、日本に限らず欧米の仕事のスタイルはPCを中心としたデスクワークがメイン。それに合わせた練習法を模索していくことも今後大事な視点になると感じる。これからは、ロルフィングから見たヨガ、またはヨガから見たロルフィングという二つの視点から見ていき、本コラムでも取り上げていきたいと考えている。

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人間が開発が作り出す身体的なメソッドはいかなる方法であれ、一長一短がある。客観性の担保がもっとも大切なサイエンスですら、何か新しいことが発見されても、わかっていないことも明記する。ヨガも様々な流派があるが、それぞれ一長一短があるということを理解する必要がある。
ロルフィングも人間が開発した以上、限界がある。この点に関してはPhase IIとPhase IIIのロルフィング・トレーニングで触れているので本コラムで触れる予定だ。