【R#37】身体と心(1)〜深層とトラウマ

ロルフィングのトレーニングを受けていると心理的な理論はそれほど出てこない。身体を調えることによって、心も調っていくと考えているからであり、実体のないもの(心)ではなく、実体のあるもの(身体)にフォーカスしているからである。

ロルフィングのトレーニングでもトラウマについては少しは触れる。深層のセッションに入っていくと、ちょっとした深層の変化によってその人の知られたくないことや、押さえつけられた感情が湧き出てくることがあるからだ。もちろん、専門的な教育を受けるというわけではなく、あくまでもどういった考えがあるのか、という観点で。
Peter LevineのWaking the Tiger – Healing Traumaはロルフィング・トレーニングの課題図書のリストの中に入っている本だ。その本によると、動物は敵に遭遇するときに、闘う(Fight)又は逃走(flight)の2つの手段を取るが、その2つを取ることができない場合に、凍りつく(Freeze)という第三の手段の方法をとることが知られている。You Tubeには、人間によってライフル銃で打たれたクマが、そのショックによって生じたエネルギーを解放する凍りつく映像(MUST SEE: How to Discharge Trauma: Trauma Release Seen For the First Time –)が公開されている。
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トラウマというのは、心的外傷によって長い間それに囚われた状態、又は心理的に否定的な影響を持っていることを指す。普通、トラウマは「それが何によって引き起こされたか」を探ることに焦点を当てがち。しかしながら、Levineは、原因となる事件が問題ではなく、その結果として起きた身体内のショックのエネルギーが中途半端な形で身体内に残ってしまうこと引き起こされるのだと考えた。そして、動物と似たように、エネルギーを全て放出するといったプロセスを経ることで初めてトラウマが完治することを、実際に何例かの患者に治療することを通じて示してきた。Levineが強調しているのは、トラウマの解決は、その人の身体内で感じる身体感覚を呼び起こしその観点を大事にするということ。
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深層へ進むと、こういった未解決のトラウマが潜んでいる可能性がある。例えば、今回のトレーニングにおいて、深層のセッションに入ってからなかなか手放せない力が奥にあり、手放すことで感情が湧き出るという場面に遭遇した。どんな深い感情であっても、大切なのは身体を整えるという観点と身体感覚を大事にするということ。ロルフィングから学ぶことは、心理的なものは、身体を調えることによって本人による解決策が見えてくるということだと思う。そうはいうものの場合によっては解決できないことも出てくるかもしれない。ロルフィングも万能ではないので、その点をわきまえた上で、この手技について考えることが大切なんだと感じる。
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身体と心についてトラウマの観点から述べてきた。本コラムでもこのテーマについてはどこかの時点で再度触れたいと思う。